
普通自動車は、所有者が変わった時や、所有者の名前が変わった際に名義変更をしなければなりません。
手続きをしないと、道路運送車両法違反となり、50万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。
そのほか、税金や保険のトラブルに発展したり、車検を受けられなくなったりしてしまうので注意が必要です。
販売店で中古車を購入した場合は、販売店が手続きの代行をしてくれるので問題ないでしょう。
しかし、家族間や友人間で売買や譲渡をした際、またネットオークションなどで購入した場合は、個人で名義変更を手続きするのが一般的です。
この記事では、「個人で自動車の名義変更を行う方法」や、手続きの際の注意点について解説します。家族間や友人・知人間で、自動車の売買や譲渡の予定がある人は、ぜひ読んでみてください。
目次
普通自動車の名義変更は移転登録と変更登録の2種類
普通自動車の名義変更は変更内容によって、区分や手続きの仕方が異なります。
名義変更の申請に使用される区分は、主に「移転登録」と「変更登録」の2つです。
所有者の変更の際に行う名義変更は、移転登録になります。
結婚による苗字の変更も名義変更ですが、所有者自体は変わらないため、移転登録には該当しません。苗字の変更ができる手続きは「変更登録」です。
変更登録は所有者の情報などに関する変更などで、苗字のほかに、引越しによる住所の変更や、自動車を使用する本拠の位置の変更が該当します。
移転登録について詳しく解説していくので、所有者の変更手続きをされる人は参考にしてください。
移転登録はどのような時に行う
移転登録をしなければならないケースについて紹介します。
自動車の名義変更が未経験な人の中には、どのようなケースが移転登録に該当するかわからないという人も多いでしょう。
移転登録は、以下のようなケースで、普通自動車の所有者に変更が生じた場合に行います。
- 個人間で売買や譲渡をした時
- ローンが完済した時
- 遺産として相続した時
ケースによっては手続きが複雑になるため、注意が必要です。具体的に解説していくので、名義変更が移転登録に該当する人はチェックしてみてください。
個人間で売買や譲渡した時
個人間で車の売買や譲渡をした場合は、名義変更の手続きを当人たちでする必要があります。
個人間での取引では、販売店のように名義変更手続きを代行してくれる仲介人がいません。
仮に手続き代行を第三者に依頼するにしても、当人たちで業者を手配します。
名義変更が適切かつ速やかに手続きされないと、さまざまなトラブルに発展する可能性があるため、個人間での取引は名義変更の準備をしっかりしておくのが大切です。
過去に新所有者が名義変更を行わなかったことで、旧所有者に納税通知書が届いた事例や、新所有者の事故の責任を旧所有者が問われた事例などがあります。
スムーズかつ確実に名義変更できるよう、契約の際はしっかり話し合って、手続きの段取りなどの取り決めをしておきましょう。
ローンが完済した時
ローンの完済時も、車の移転登録が必要になります。
車をローンで購入した場合、ローン完済までクレジット会社やディーラーが所有者になるケースが多いです。
ローンが終われば、クレジット会社やディーラーが所有者である理由がなくなるため、すみやかに移転登録を行わなければなりません。
ローンを完済すると、クレジット会社やディーラーが所有権解除の案内を送付してくれます。名義変更のやり方に関する案内もあるので、手順に従って手続きを進めてください。
遺産として相続した時
車検証の所有者欄に記載された人が亡くなった場合、その自動車の名義は相続人に変更されなければなりません。
自動車に関して相続手続きの期限はありませんが、名義変更せずに放置してしまうと、車検が通せなくなり、売却や廃車もできなくなってしまいます。
とはいえ、相続した車の名義変更は、非常に複雑です。
通常の名義変更とは、用意しなければならない書類も異なります。
必要な書類は車の相続人が特定できるものや、所有者の死亡や相続人全員との関係が確認できるものなど、準備や確認、取得に時間がかかる書類が多いです。
ローンが終わっていなければ、所有者の名義変更になるか使用者の名義変更になるかも変わってきます。
不安な人は車検証を持参して、運輸支局登録担当窓口で相談するようにしましょう。
普通自動車の移転登録を個人で手続きするやり方
普通自動車の移転登録を個人で行う流れについて解説していきます。事前の準備や当日行う手続きについて知りたい人は参考にしてください。
個人間で自動車の売買や譲渡をした場合、一般的には新所有者が名義変更の手続きを行います。新所有者による名義変更の流れは以下の通りです。
- 必要な書類を準備する
- 管轄の運輸支局へ行く
- 書類をそろえて申請窓口に提出する
- 車検証を受け取る
- 税事務所に申告する
※ナンバープレートの変更手続き
1から5までが一通りの流れですが、ナンバープレートを変更する必要がある場合は、さらに手続きや交換作業をしなければなりません。
各手順について詳しく解説していきます。
1.必要な書類を準備する
まずは名義変更の手続きに必要な書類を準備しましょう。
普通自動車の移転登録を自分で行う際は、旧所有者と新所有者が各自書類をそろえ、管轄の運輸支局へ提出しなくてはなりません。
名義変更は15日以内に行うと法律で定められており、スムーズな手続きが求められます。
運輸支局に申請する日に間に合うように、余裕を持って準備してください。
委任状や譲渡証明書など、申請までに旧所有者に作成してもらう書類があるので、早めにお願いしておきましょう。
移転登録に必要な書類
個人間で普通自動車の売買や譲渡をした場合の、名義変更に必要な書類について紹介します。旧所有者と新所有者がそれぞれ準備する書類は以下の通りです。
旧所有者が準備する書類 | 新所有者が準備する書類 |
印鑑証明書 | 印鑑証明書 |
実印を押印した委任状 | 申請書 |
実印を押印した譲渡証明書 | 手数料納付書 |
自動車検査証(車検証) | 自動車税種別割・環境性能割申告書 |
必要に応じて住民票など | 自動車保管場所証明書(車庫証明) |
申請書と手数料納付書、自動車税種別割・環境性能割申告書は、事前に書式のダウンロードもできますが、手続きを行う運輸支局で配布しています。
申請書は実印を押印する箇所があるので、申請時に作成するのであれば、実印を持参してください。
両所有者の印鑑証明書は、発行から3ヶ月以内のものと指定されています。また、警察署が交付する自動車保管場所証明書は、証明日(交付予定日)から1ヶ月以内に提出しなければなりません。
住民票は、旧所有者が用意する車検証と印鑑証明書の住所が異なる場合に必要です。
2.管轄の運輸支局へ行く
書類がそろったら、新所有者の「使用の本拠の位置」の管轄となる運輸支局へ手続きに行きます。
使用の本拠の位置とは、一般個人であればその住所、法人であれば主な事務所や本社、本店などがある場所です。
運輸支局は平日の8:45〜11:45、13:00〜16:00の間で、予約不要で申請を受け付けています。
手続きは時間がかかるので、遅くても終了時間の30分前までに行くようにしましょう。
また、ナンバーの変更が必要になる場合は、ナンバーの取り替えを行うので、運輸支局に該当車両を持ち込んでください。
3.書類をそろえて申請窓口に提出する
運輸支局へ行ったら、まず現地で作成する書類があれば作成します。
申請書や手数料納付書は現地で取得できるので、事前に準備していて忘れた場合でも、新たに作成可能です。
続いて、移転登録手数料の支払いとして、手数料納付書に貼付する印紙を購入します。
運輸支局内に印紙販売窓口があるので、手数料分の印紙を購入してください。
手数料納付書への印紙の貼付、足りていない書類の作成が終わったら、必要な書類をまとめて申請窓口に提出します。
4.車検証を受け取る
新しい車検証を交付してもらえるので、申請後は職員の指示に従って待機してください。
新しい車検証を受け取らないと、税事務所への申告ができません。
車検証を受け取ったら、記載ミスやもれがないかしっかり確認してください。
数日後に気づいても、再度運輸支局に行き、最初からやり直さなければなりません。必ずその場で確認しましょう。
車検証の記載に間違いがあった場合はその場で指摘して、対応してもらってください。
5.税事務所に申告をする
車検証を受け取ったら、運輸支局内に自動車税事務所があるので、名義変更の申告を行います。
申告をしないと、自動車税が正しく課税されないので、必ず行ってください。
税申告窓口で自動車税種別割・環境性能割申告書と、新しい車検証を提出すれば申告ができます。
注意点としては、購入から間もない、比較的新しい普通自動車を名義変更すると、その場で環境性能割の支払いが発生する可能性があるという点です。
環境性能割は電気自動車や天然ガス自動車など、燃費性能が優れた自動車が非課税になるほか、計算して取得価格が50万以下になれば免税となり支払いは発生しません。
複雑な計算式で、車種や年式によって金額が異なるので、あらかじめネットなどで調べるか、心配であれば申請の前に窓口で相談してみるのをおすすめします。
申告をして必要に応じて納付をしたら、名義変更の手続きはひとまず完了です。
※ナンバープレートの変更手続き
ナンバープレートの変更が必要な場合は、上記の手続きの後、変更手続きを行います。
運輸支局内で交換作業を行うので、名義変更で管轄する運輸支局が変わった際や、ナンバープレートを変更したい場合は、車を持ち込みましょう。
変更手続きの流れは以下の通りです。
- 車から自分でナンバープレートを外す
- 運輸支局内のナンバー返納窓口にナンバーを返却する
- ナンバー交付窓口で新しいナンバープレートを購入
- 自分でナンバープレートを取り付けて係員に封印してもらう
必要な工具は運輸支局で貸し出してくれます。変更手続きでさらに時間がかかってしまうので、ナンバーを変更するのであれば、時間に余裕を持って行きましょう。
自分で名義変更をする際の注意点
普通自動車の名義変更は、個人で行う際に、いくつか注意しておくべきポイントがあります。名義変更をスムーズかつ適切に完了させるために、以下の点に気をつけておきましょう。
- 無料の譲渡でも料金は発生する
- 車庫証明は取得までに時間を要する
- 自賠責保険の名義変更も必要
- 任意保険は同居する親族間なら等級引き継ぎができる
各項目について、詳しく解説していきます。
無料の譲渡でも料金は発生する
移転登録は、個人間で無料で車を譲り受けたとしても、費用が一切かからないわけではありません。車を譲渡された際は、手続きに手数料や、必要に応じて料金が発生します。
料金として発生するのは、移転登録手数料と車庫証明の取得費用、必要であればナンバープレートの代金、新しい車であれば環境性能割などです。
環境性能割に関しては、車種と年式、経過年数によって課税金額が変動し、かからない場合もあれば数万円かかるケースもあります。
手続きを業者に依頼する場合は、これらの料金に加え、代行手数料を支払わなければなりません。
自分で名義変更すれば、もちろん代行手数料は不要です。しかし、最低限の費用負担はあるので、かかる費用については確認しておくようにしましょう。
自動車の名義変更にかかる費用の目安
移転登録の手続きにかかる費用の目安について紹介します。状況によって、費用が変わってくるので、名義変更の予定がある人は事前にチェックしておきましょう。
普通自動車の名義変更で必須となるのが移転登録手数料で、料金は500円です。
ナンバーを変更するのであれば、変更手数料に350円かかるほか、ナンバープレート代がかかります。
ナンバープレートの料金は、ペイント式なら1組1,500円前後、字光式なら1組5,000円前後です。
このほか、場合によって以下のような費用がかかります。
料金の目安 | 詳細な料金の確認先 | |
車庫証明の取得費用 | 2,500〜3,000円程度 | 管轄の警察署 |
希望数字ナンバー | 4,000〜6,000円程度 | 管轄の希望ナンバー予約センター |
図柄ナンバー | 7,000〜9,000円程度 | 国土交通省のHP |
各料金は都道府県で異なりますが、それぞれの管轄の機関やHPで、詳細な金額の確認が可能です。費用を事前に知りたい人は、各機関に問い合わせるか、HPをチェックしてみてください。
車庫証明は取得までに時間を要する
旧所有者から新所有者に名義変更する場合、駐車場所も変わるのであれば、車庫証明(自動車保管場所証明書)が必要です。
車庫証明は、車両の保管場所を確保していることを証明する書類で、住所を管轄している警察署によって発行されます。
証明書の交付には、申請から3日〜1週間ほどかかるのが一般的です。
新所有者が賃貸に住んでいる場合、事前に不動産会社や大家さんに連絡をして、使用の承諾書を取得しておく必要があります。
賃貸に住んでいる人は、車庫証明の取得により時間がかかるので、早めに申請しておきましょう。
自賠責保険の名義変更も必要
車の名義を変更するのであれば、自賠責保険の名義変更もする必要があります。
自賠責保険は任意の自動車保険に対して、全ての車に加入が義務付けられている強制的な保険です。
手続きに必要な書類などは、加入している任意の自動車保険の会社に問い合わせれば教えてくれるので、連絡してみてください。
自賠責保険の名義変更を済ませておかないと、未加入扱いで法律等の処罰の対象になってしまいます。
車検も受けられなくなってしまうので、忘れずに手続きしましょう。
任意保険は同居する親族間なら等級引き継ぎができる
同居する親族間で自動車を譲渡して名義変更した場合、契約者が変更されても等級で引き継ぎ(等級継承)ができます。
原則として同居が条件となるため、結婚して別々に住んでいる子どもへの譲渡では、等級継承は認められません。
ただし、配偶者に限っては別居していても等級継承ができます。
譲渡される側が自動車保険に加入している場合、車両入れ替えの手続きを行えば、そのまま自身の保険を使い続けるのも可能です。
ただし、旧所有者側の任意保険のサポートが充実しているのであれば、等級継承の検討をおすすめします。
やり方や注意点を理解して名義変更の手続きをしてみよう
個人間で名義変更をする際は、平日に運輸支局へ行くのが可能であれば、移転登録の手続きに挑戦してみましょう。
必要書類や手続きの流れを理解し、注意点をおさえておけば、移転登録はそれほど難しくありません。主な書類の書き方も、国土交通省や運輸局のHPで見本を確認できます。
また、自分で名義変更ができれば、通常数万円ほどかかってしまう手続き代行費用が不要になるのも大きなメリットです。
自動車は、取得してからも維持費などにお金がかかるため、諸費用がおさえられるにこしたことはありません。
運輸支局は丁寧に案内してくれる職員が多く、多少の不明点があっても、相談できる窓口もあります。
ぜひ今回の記事を参考にして、自身の名義変更に役立ててみてください。